みやたけし2

なぜかサンデーに移籍したみやたけし

はしれ走(1982-1984週刊少年サンデー

サッカー漫画。ギャグとストーリーどちらも好調だった時期の作品といえるのでは。全11巻。再読。
このシリーズのみ、語るのにちょっと力が入りそう。

はしれ走 (1)

はしれ走 (1)

のっけからなんだが、みやたけしの漫画は「クサい」。そこに拒絶反応を起こす人には、この漫画は読めないと思う。
「ブンの青シュン」の主人公が明朗快活天然バカだったのに対し、この作品の主人公である走(かける)は、気の小さいいじけキャラ。前作に比べて主人公の内面を丁寧に描いている。作者自身の内面が最も投影されているキャラクターなのかも知れない。

内面の描写

丁寧に描いているとはいっても、サッカーに目覚める過程だとか、勝利への執念だとか、読んでいてナンノコッチャなところはかなりある。それでも読ませてしまうのは、多分作者の気迫が作品の勢いとなり、読み手を押し切ってしまうからではないかと思う。つまり作者が「ノリにノっていた」のだと思う。逆に、そこで押し切られなかった読者はシラッとなってしまうにちがいない。

必殺シュート

本人は普通に蹴っているのに、なぜかボールが後ろに飛ぶ。そんなアホな。
キャプテン翼」のタイガーショットなどは、中途半端に非現実的、しかもド派手。
かたやこの漫画の必殺シュートは、目いっぱい非現実的だけど、なんか地味。技そのものがギャグ。でもストーリーは真面目。このわけのわからないバランスはみやたけし独特のものだ。
他にもみょ〜な戦術やシュートがいくつか出ます。

脇役たち(チームメイト)

この作品は脇役がいい。岬太郎みたいな人畜無害の便利屋はいない。
葦谷(あしたに):屈折キャラ。主人公へのライバル心と仲間意識を行ったり来たり。
納内(おさない):チビで身体能力は低いがセンス抜群の曲者。中盤からクローズアップ。
夢雄(ゆめお):かっこばかりつけたがるチームのお荷物。上の2人よりは格落ちするが素質はそこそこあるみたい。

脇役たち(ライバル)

高句(たかく):サッカーの申し子。さわやかキャラだが声のでかさがギャグのアイテムに。
岩条(がんじょう):デカ頭の石頭。試合では今ひとつ見せ場がなかった不遇のキャラ。
太下(たいした):テクニシャン。曲者ぶりが際立つ。

怪我担当

この作品の成功要因のひとつは、主人公が常に元気であることだったりするのかも。
一方で最大のライバルである高句が怪我で選手生命を危ぶまれるという役を請け負うことになる。が、他の作品とちがって話を重苦しいものにしていない。「たとえ選手生命を絶たれてもこの試合に出る」みたいな理屈はちょっと抵抗あるけどね。

賛否

中盤、葦谷の弟が登場したあたりは勢いをやや失っていた気がするが、終盤にまた盛り上がりを見せてくれる。これまでの作品のような迷走もなく、余韻を残す幕切れ。やっぱり作者はノッていた……んじゃないかなあ。私の読んだ中ではみやたけしの最高傑作。
でも高校時代に何人かの友達に読ませたら不評だった。大好きで全巻持っているという先輩もいたけど。

パクリというのは野暮か

「はしれ走」のパクリなんじゃないかと思える「キャプテン翼」の1コマをネットで見たことがある。
あるギャグっぽいゴールシーン。「はしれ走」では、難敵相手にようやく1点をもぎ取り、それまでの閉塞感を一掃してくれた、わりと好きなコマ。「キャプテン翼」ではどんな流れで描かれたのかは知らない。あれだよ、あれ。

ストライカー列伝(1984-1985、増刊少年サンデー)

「はしれ走」の続編。小5から高1にワープ。

ストライカー列伝(1)

ストライカー列伝(1)

これはねえ……設定がまずかったんじゃないか。つまらなくはないけれど、前作に比べるとかなり薄味。
高校に進んで全国に散り散りになったライバル、チームメイト達。
なぜかしょうもない弱小高に進学した主人公。ダメチームを鼓舞しながら地区予選を勝ち進むという少年漫画の王道なんだが、これがいまいち盛り上がらない。チームメイトにまるっきり個性が与えられておらず、私は人物の名前すら思い出せない。前作との大〜きな違い。
前作は、リアリティはなくとも説得力があった。だが弱小チームが猛練習することもなく、あれよあれよと決勝まで進んじゃう今作の展開には説得力のかけらもない。影利(かげり)という相棒が加わるという要素もあったが、取って付けた感は否めない。ちなみに影利は失明担当。またそれかい!
地区予選の山は、前作からのライバル岩条との対決。しかーし、わりとあっさり負ける岩条。やられキャラ返上ならず。
全国大会では、かつての仲間やライバルと再会また再会。これにはちょっとワクワクしたけれど、一戦交えておしまいだから、大したドラマにならず。
曲者の納内と太下にコンビを組ませたのはヒット。変幻自在のコンビネーションの「いや、しかし攻撃」というネーミングもヒット。

名選手になってしまった主人公

前作では、不器用だが持ち前の身体能力とひらめきでチームを引っ張るというキャラだった走。だがそれから4年あまり経っていては上達していて当然。バナナシュートまで使いこなす技術を身に付けていた。
こんな万能選手になられては作者としては扱いに困ったのではなかろうか。「相変わらず不器用だな」という設定でよかったのでは。

あのフリはどこに

この漫画、第1話で高句との対決間近の場面が描かれ、そこから高校入学時に戻ってストーリーが始められている。ところが、終盤の高句との対決はシチュエーションがまったく違う。なぜ!
最終話は夏の大会、第1話で描かれたのはその後の冬の大会ということのようだが、それでも夏に高句が怪我から復帰していては辻褄が合わない。打ち切りが決まって展開を急遽変えたってとこかしら。ホントは夏はどこかで惜敗、冬に念願の決勝進出という構想だったのかも。
全3巻。短い。