この漫画家に笑わされる日が来ようとは

あれこれ漫画は読んでいるものの、カンソウは頭の中で書いて終わってしまっているここ数年。
私の最近のお気に入りのひとつは島本和彦の自伝的漫画「アオイホノオ」。フィクションの率はわからないが私は全部事実と思って読むことにしている。そう思った方が面白いから。

暑苦しい画風と醒めた視線。熱血を茶化して醸す笑いがこの漫画家の身上だが、この作品ではその茶化し(突っ込み)のターゲットが若かりし頃の作者自身(の分身)に向けられている。ここでも作者の突っ込みがさえわたって面白おかしく読めるのはもちろんだが、同時に主人公への思い入れもたっぷり持たせてくれ、そこが気に入っている。
島本ファンの間ではとうの昔から話題沸騰だったようだが私には「今」旬の漫画なのである。8巻までしか読んでないけど……。

暴言

作者が、当時売り出し中で後に巨匠となったあだち充高橋留美子といった面々をどう評し、どう意識していたかが語られているのも、この漫画の面白いところ。
さて7巻で意外な漫画家がクローズアップされる。
原秀則
島本和彦と同じ1961年生まれだが19歳でデビュー(春よ恋)し、初連載(さよなら三角)も持った。作者の分身たる焔燃(ホノオモユル)は、「こいつになら勝てそう」と自分がデビュー前なのを棚に上げて勝手にライバル心を燃やす。
そこで語られる原秀則評が……漫画家としての価値をほぼ全否定(しかも的を射ている)。絶叫した次のコマからは、主人公ではなく作者自身のうめきが聞こえて来た。「ああ言っちまった」と。
「暴言」がこの漫画の売りでもあるのだが、あだち充高橋留美子に対しては作品への高評価あってこその暴言だから笑って読めた。
だが、この身も蓋もない原秀則評には笑えなかった。その代わりに爆笑した。「言っちまった」という可笑しさと同時に、私がおよそ20年前に胸の奥にしまい込んだモヤモヤが吹き飛んだ思いもした。「よくぞ言ってくれた」と。

全否定された漫画家は

あんなことを書かれた当の原氏はどう思っているのかしらと検索してみたら、これまた雑誌掲載当時にネットで話題になっていたと判明。
原秀則ブログに笑った。
http://ameblo.jp/hidenori-hara/
アオイホノオ」でブログ内検索かけるとたくさん出ます。(追記:「島本」で検索した方がいいかも。)
これが最初かな。島本氏もコメント欄に登場。
http://ameblo.jp/hidenori-hara/entry-10888341646.html
ここから3日続けてアオイホノオネタ。
でまあ面白いんだけど……その後徐々に「作中で俺をいじってくれ」とおねだりモードになって行く原氏。それがなければもっと面白かったのになあ。