石井いさみ「750ライダー」3

後半(最近初めて読んだ)では、主人公とヒロインの恋愛模様の比重が増している。

750ライダー(50)

750ライダー(50)

しかしこれほど山も谷もない恋愛模様を描いた漫画というのも珍しい。
1巻ではいつもつるんでいるのは主人公と男友達の2人。そこにいつの間にかヒロインが加わって仲良し3人組になっている。
二人はどうも惹かれ合ってはいるみたい。周りもお似合いだと思っているみたい。
でもお互いグイグイ踏み込もうとはしないし恋のライバルもおらず、徹頭徹尾「仲良し3人組」。
たまに「二人で海に行こうか」なんて約束を交わすが、ハプニングが起きて主人公がすっぽかす。それで仲がこじれるのかというと、そうでもない。また約束。またすっぽかす。前半はその繰り返し。


ところが後半になると、少しずつ様子がちがって来る。でぇとがちょいちょい実現する。でも、どこからが「付き合っている」状態なのかといった線引きはなく、二人で過ごす「ほんのひと時」が積み上げられて行く。ただそれだけ。そして、そこがいい。
でぇとのない回もそう。二人が共有する、ちょっとした何か。その「ちょっとした何か」の積み重ねが尊く感じられる。
まさかこの年になって「750ライダー」に読みふけることになろうとは。


二人の仲は、一応後半になると「進展」する。でも3人組の構図が崩れることはない。
「ふあすときす」が毎年の恒例行事として2度も3度も繰り返される漫画など「750ライダー」くらいのものであろう。(前の年のはなかったことになっている。ずっと高2ですから。)


作者が自然体で描けたのは、こうした「薄味」の後半部分なんじゃないだろうか。けれん味を極力抑えて、描きたいことを描きたいように表現しているように思う。
750ライダー」は積極的に人に薦めたい漫画ではない。才気がほとばしっているわけでもなく、とりわけ私が気に入った後半は退屈に感じる人が多いだろう。