ドラクエを語ってみる6

すぎやまこういちという人

ドラクエシリーズに今ひとつ興味を持てなかった理由のひとつに音楽がある。
高い人気をかれこれ30年近くも持ち続けているドラクエシリーズの音楽を、私は好きになれない。
理由を聞かれてもうまく答えられない。しいて言うなら、鼻に付く、頭で考えて作られた曲に聞こえる、といったところか。とにかく聞いていてなんとなくイライラするのだ。ドラクエ7のBGMの中でも、気に入ったものはひとつもない。(他に聴いたことがあるのは1〜4のみ。)
すぎやまこういちという人が喋っているのを初めて見たのは、90年頃だろうか、偶然「徹子の部屋」を観た時だった。かなり記憶はあやふやだが、こんなことを言っていたと思う。
「ある人から“ゲームは一人で部屋で遊べるから子供のためによくない”と言われたのですが、“では読書も子供のためによくないのですか”と問い返したら黙っちゃいました。」
面白いことを言うおっちゃんだなと思う一方で、ちょっと違うんじゃねえのという違和感も残った。同時にこの人物への警戒心も残った。


そして近年の氏の発言。といっても私はネットで断片的に読んだのに過ぎないのできっちり論評することはできないが――。
近隣国をドラクエの「悪者」になぞらえて「悪いやつをやっつけて幸せになろう」という啓蒙的な意味がドラクエにはあるのだとか、ドラクエ1が「わしの仲間になれば世界の半分をやろう」と言われて「はい」と答えない(=領土を譲らない)心の大切さを教えているのだとか、そういう類の発言を繰り返しているらしい。
そのことを知り、私が若い時分よりこの人に対して抱いて来た警戒心や作品への反発心は間違っていなかったんじゃないかと、思いを新たにしている。


かつては、すぎやま氏は世間のゲーム叩きに悩まされたという。子供への「悪影響」を過大に騒ぎ立てる向きは確かにあったにちがいない。
だが、子供への「教育効果」を過大に強調する近年のすぎやま氏の発言は、かつてのゲーム叩きと同質に感じられて薄気味悪い。
ゲームなんてもんは、ちょっと体に悪いだけのジャンクな遊び。それ以上でも以下でもない。でも、そこがいい。私はそう思ってるけどね。