タメニナル漫画

かたや今も活躍中の藤子不二雄A「愛…しりそめし頃に…」9巻。

仲間達の前で熱弁を振るう寺田ヒロオ。この人物は、漫画は「ためになるもの」であるべきという信念を持っている。
私は必ずしもこれを否定はしないが、「何が正しくて何が正しくないか」を伝えるばかりの啓蒙心だとしたら、大切なものをたくさん切り落としてしまうように思う。
この手の啓蒙心の持ち主で漫画家として長く活躍できた人というと誰がいるだろう。真っ先に思い浮かぶのは矢口高雄(テレビで「漫画は啓蒙心を持って描かねばいけない」とか言っていた)。
ちなみに作者の分身たる満賀道雄は、寺田ヒロオの主張にひとしきり悩むが、これはこれで漫画の醍醐味なのだと思い直して、ドンパチアクション漫画「シルバークロス」の執筆に没頭する。