複数の作家による書き下ろし短編集「新潮現代童話館」を読んだのはもう15年も前のこと。全2巻。
- 作者: 今江祥智,灰谷健次郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1992/01/01
- メディア: 文庫
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今江祥智、灰谷健次郎、上野瞭、舟崎克彦、江國香織ほか錚々たる顔ぶれの中、初めて読む佐藤多佳子という作家のこの短編が抜きん出ていた。も少し慎重に言えば、これがもっとも印象に残った。
既に傑作と名高かった「サマータイム」という同じ作家の作品を、その後読んでみた。確かに心に残る作品だったが、「黄色い目の魚」ほどのインパクトは受けなかった。どちらが優れた作品かは置いといて、はじめに読んだ短編がそれだけ印象深かったということだ。
それほど注目していながら、以後この作家からはなんとなく遠ざかっていた。古本屋で見つけた「しゃべれども しゃべれども」も買ったまま何年も本棚で眠っている。「黄色い目の魚」が単行本として出版されたと聞いた時も、興味をそそられながらも「まあそのうち」と手に取ることはなかった。それを今年のはじめに古本屋で文庫版を入手。今日読了。
- 作者: 佐藤多佳子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/10/28
- メディア: 文庫
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元々は中学生の女の子が主人公の短編。そこに男の子が加わり、舞台は高校へと移る。男−女−男−女と主体を切り替えながら語られる。
男の子がいる。女の子がいる。だがこれを「恋愛もの」とは呼びたくない。俺が許さん。これは二人が「こんな風に」関わった物語、なのだ。わかったか。わからないか。でもそうなのだ。
脇役達の人間模様については、語られないままの部分が結構ある。あとがきに外伝を匂わす記述もあり、もしかしたら近い将来お目にかかれるかも知れない。
よくぞ言ってくれました
内容を詳しく書くわけには行かないけど、ある箇所から、読んでいて「そのまま」話を収めてほしくないと感じていた。こうすれば傷付きません傷付けません、こうすればうまく行きます、そんな分別の入り込む隙間のない「むき出し」の二人であってほしかった。
言っちゃうんだよ、このバカ。
よく言ったぞ、このバカ。
えらいぞ、このバカ。
佐藤多佳子を読め。いいから読め。