佐藤多佳子「しゃべれどもしゃべれども」

勢いで本年2冊目。5年以上前に買ったのをやっと読んだ。

しゃべれども しゃべれども

しゃべれども しゃべれども

仕事(落語)のスランプ、吃音、いじめなど、目一杯現実的な問題を抱えてもがく人達の交流。江國香織の後に読むと、酒の後の握り飯のようだ。それでいて少しも重苦しくない。
努力を継続することの苦しさを表す素晴らしい文がある(「セコ」とは「悪い」という意味の隠語らしい)。

笑いが取れないのが何だ。まだまだ尻が青いんだから当り前。客にそっぽを向かれて当り前。野次られて当り前。しかし、その当り前も続くと、ボディーブローのようにじわじわと全身に応えてくる。
 今の自分をセコだと思うのは、まあ良かった。これからの自分が、どこまでいっても、やはりセコかもしれない、才能もセンスもなくて永久に上達しないと考えるのは恐ろしかった。心臓のあたりが痺れるように冷たくなる。何か保証のようなものが欲しい。俺は大丈夫なのだと、きっとうまくなる、きっと売れるという自信のかけらでもいい、欲しい。

一歩前に踏み出しましょう。そういう物語を書くのが実は一番難しいのかも知れない。佐藤多佳子は、それを衒いなくできる作家だ。
この作家の描く恋愛模様も、江國香織とは対照的だ。ベースにあるのは5人の男女(1人は子供)の交流。現実的な問題に向き合った者同士だから持ち得た男女の結び付き。その先にあるのは、江國の「神様のボート」に登場した老夫婦の姿なのかも知れない。
これ、映画化されてたのね。誰かDVD貸して下さい。

そうか、それで国分太一は落語ができるのか。
漫画化もされている。誰か貸して下さい。
しゃべれどもしゃべれども (ジェッツコミックス)

しゃべれどもしゃべれども (ジェッツコミックス)

オフィシャルサイトみっけ。文字が全部ボールド。
http://www009.upp.so-net.ne.jp/umigarasu-to/