ぶりゅ

禁じられた遊び」がしんどいので「冷静と情熱のあいだ」のBlu(青)を平行して読む。

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

「赤(江國香織)はいいけど青は……」という人が周囲に複数いたし辻仁成という名はまったく知らなかったので読む気はなかったが「禁じられた遊び」に妙な形で背中を押され。悪くなかった。
最初の章を読んだ時は「えらい野暮ったい文だなあ」と感じた。「あおいのことがいまだに忘れられない」とか、もうちょい工夫して書いてくれと。が、そういう抵抗感は時折感じる程度で、力量のある書き手だと、読み進めるうちに思うようになった。
こうしたアクのない男性というのは、なんだか女性が描いたみたいだと思った。別に悪い意味ではなく、こんな風に男性を描く男性作家もいるものなのかと単純に驚いた。女性読者を意識してそうしたのか、それとも元々そういう作風なのか。面白くは読めるが、私には思い入れは持ちにくい。
この男性を「優柔不断」とマッチョになじる人も多いようだが、「忘れられない」ということは性格や人格でなく、この作品においては単なる「現象」として私は捉えていたので、その手の苛立ちは感じなかった。


清水眞砂子今江祥智の「写楽暗殺 (理論社の大長編シリーズ)」を「描かれなかった部分(世の中の裏側、ドロドロ)が作品に奥行きを与えている」と評していた。
「Rosso(赤)」を私は、描かれていないかつての恋人(男)を、そんな風に楽しんだ。そこで裏側(青)をあからさまに見て(読んで)しまうのは、興味深くもあり、同時に味気ない作業でもあった。
ちなみに連載は赤−青−赤−青と章ごとに交互だったらしい。読むなら交互に読むか、または赤−青の順がいいように思う。青−赤はおすすめしない。片方だけというのは、もっとおすすめしない。
どなたか興味があれば赤・青セットで差し上げます。値札付いてますが。