川島誠「ロッカーズ」

2年半前に100円で買ってそのままだった「ロッカーズ」読了。
以前「虚無感」という言葉を使ったが、今まで読んだどの作品よりも虚無的だ。
以前「クール」とも言った。確かにこの作品も情緒的な描写は皆無といっていい。だが、なにかじめっとした雰囲気に覆われている。陰鬱と言ってもいい。主人公が「800」「夏のこどもたち」「もういちど走り出そう」のような割り切った性格でないからかも知れない。(それ自体はあくまで作品の「特色」であって「欠点」ではない。)
虚無感の中から確かな何かを掴んだり、探そうと足を踏み出したりといった姿勢を積極的に描いてもいない。(ほのめかしを読み取れなくはないけれど。)
幸福感も絶望感も終始読み取れない。バンド活動を「幸せだった」と語ってもいるが、到達点として読み手に爽快感を与える性質のものではない。破綻以外の運命が考えられないその物語構成(作品としてダメという意味ではない)は、爽快感を期待させすらしない。


説明が続かないのでひとまずやめよう。面白い小説だ、と言うことはできるかな。よくわからない。これまた文庫版が出るようだ。

ロッカーズ (角川文庫)

ロッカーズ (角川文庫)