安倍晋三という人

安倍晋三オフィシャルサイトの表紙写真を見たことがおありだろうか。
http://www.s-abe.or.jp/
農村らしき所で高齢の女性に深々と頭を下げる安倍氏
つまりなにかい、「安倍晋三はこんな婆さんにもしっかり頭を下げる男です」とでも言いたいのか。
“こんな婆さん”役としてダシにされた女性はいい面の皮ではないか。


第2次安倍政権はすぐダメになるという3年前の私の予想は見事なまでにはずれたわけだが、実際驚いている。
この人を初めてテレビで見た時は、温厚そうな風貌に、過去の総理大臣の面々とはちがうかなと感じたが、別の意味でちがっていた。
森喜朗氏などは「面の皮の厚い守銭奴」という実にわかりやすいキャラクターだが、安倍氏は「愛国者」。カギかっこが重要。
自称愛国者愛国者などいやしない。彼(彼ら)は、自己のアイデンティティーの拠り所を「国」という実体のないものに求めているに過ぎない。
「日本を誇りたい」「世界から尊敬される日本」「美しい国、日本」
これらの「日本」を「私」と置き換えてみれば、安倍氏をはじめとする「愛国者」の無自覚の本心が透けて見える。
つまり安倍晋三氏は「自分が肯定されたいだけの人」なのだ。
行動原理がこうした幼児的欲求に根差していると考えると、彼の政治にも言動にも合点がいく。


彼を初めて見た時に直感したように、彼は他の自民歴代総裁にない繊細さを持ち合わせているのではないかとも私は思っている。利害の絡まない交友においては、結構いいヒトだったりするのかも知れない。
しかしどういうわけか、恐らく彼は自分の劣等感と向き合うことをまったくせずに大人になってしまった。そして劣等感をいびつなやり方で処理しようとする人間になってしまった。こともあろうに全国民を巻き込む形で。


もったいないことに、彼は傷付きやすい自分の気性を「他者の苦しみへの想像力」という美徳へと昇華することができなかった。ヘイトスピーチブラック企業、性差別、貧困家庭などなど、社会的弱者に対して無関心なのは、彼が「冷たい人」だからではなく、人を思いやる心の余裕がないだけなのではなかろうか。
自分の政策を批判する野党議員を、歪んだ笑みを浮かべて感情的に攻撃する様子は、醜悪を通り越して滑稽で憐れだ。現代の裸の王様だ。


それにしても、ああした子供じみた言動で醜態をさらし続ける自民総裁を、党員はどう思っているのだろう。内心呆れ返っている党員も少なからずいると思いたい。(それが党内での安倍おろしにつながらないあたりが、安倍内閣の巧妙さなのだろう。)
党員達にとってみれば、さすがに現総裁の人間性を表立ってどうこう言うわけにも行くまいから、今現在口をつぐんでいるのは致し方ないところではある。彼が総裁の座を追われた後になってから自民党員が彼の人格をあれこれ言うようなら、それはそれで情けない話ではあるのだが。