飲んだ後に聴く音楽

「飲みながら聴く」ではなく「飲んだ後に聴く」。飲むのはいつも外なので。
20代前半の頃は、飲んで帰ると必ず聴く音楽があったことを急に思い出した。
酒は好きではなかったが、飲み会となると好奇心であれこれ飲んでいた。なぜかウォッカをロックで飲むことが多かった。
飲むと気分がよくなるかというとそうでもなくて、頭がボーっとして熱っぽい、風邪をひいた時のような状態になるだけだった。しかも飲んだ夜はなかなか眠れない。
そんな時に聴くとやたらと心地よい音楽があるということに、ある日気が付いた。それはベートーヴェン交響曲6番「田園」。まあお上品。酔った頭に響く弦楽器や管楽器の調べがなんともいえない。
当初聴いていたのは今にして思えば凡庸な演奏で、指揮者の名前も憶えていない。その後若かりしカラヤンによる廉価版CDを買ってからは、こちらに乗り換えた。モノラル録音だがカラヤンならではの疾走感がいい。何年か後に決定版として名高いワルター盤も買ったが、この頃はもうこの曲をそんな風に聴くことはなくなっていた。
田園交響曲の後を継いだのは「モーツァルト・オン・ジャズ」というさほど有名でないアルバム。モーツァルト没後200年にあたる1991年(もしくは90年)に発表されたもので現在は廃盤。オランダのルイス・ヴァン・ダイクというジャズピアニストによる。ジャズもモーツァルトも解さない私だが、軽やかなピアノと清涼感ある弦楽器のコンビネーションが気に入り、飲んだ後に必ずといっていいほど聴くCDとなった。酒の酔い自体はさほど心地よくなく、それどころか若干不快でもあったのが、このCDを聴くと途端に心地よい酔いとなる。
いつの間にか酒の後に音楽を聴くことが殆どなくなったのは、気持ちよく酔えることが多くなったのと、すぐに眠れるようになったからかも知れない。
なんてことをふと思い今日はシラフで聴いた。結局飲まないのかよ。

モーツァルト・オン・ジャズ

モーツァルト・オン・ジャズ