ジャッキー・チェンいまむかし

いまむかしったってもう引退してるんだっけ?

私は子供の頃、ご多分に漏れずジャッキー・チェンの映画が好きだった(ブルース・リーは受け付けなかった)。

初めて観たのは「拳精」(終盤のみ)だが、全編を観た最初の映画は「酔拳」で、私的ベストもいまだこの「酔拳」だ。

コミカルなアクションに加えて、師匠の指導でメキメキと腕を上げるというテンプレートがいい。

私が好きな作品は「木人拳」「蛇拳」と、そのパターンのものばかり(「笑拳」は観るのが遅かったため印象が薄い)。どれもラストにもう少し肉付けがあってもいいとは思うけれども、まっさきに思い浮かぶのはこれらの作品群。


だから、ジャッキー・チェンが更なる飛躍を遂げたとされる「ヤングマスター」からして、もう私の期待するカンフー映画ではなくなっていた。

最初からそこそこ腕の立つジャッキーが、そのまま最後の敵を倒してしまう。これ、どこにドラマがあるの?

そのヤングマスターについてはアクションの面白さで後から好きになったが、私にとってのジャッキー・チェンはここまでがギリギリ。


現代が舞台の映画で最初に観たのは「スパルタンX」だったか、それとも「ポリス・ストーリー」だったか。

あなたなんでカンフーの使い手なの? なんで周りの悪党までカンフーの使い手なの?

まずこの世界観にまるでついて行けない。


昔が舞台の話はいいんだよ。あの時代の中国人は全員カンフー使いなんだから。

でも20世紀のスペインは違うだろ? 香港も違うだろ?


作品ごとにスピードと激しさの増すアクションとは裏腹に、はじめからそこそこ強いジャッキーが最後に唐突に現れる強敵をどうにか倒してしまう展開に、私はいつも不満足。

最後の敵は、股をくぐらせ服を燃やしたやつじゃなきゃいかんだろう!

最後の敵は、実は父の仇だった師匠じゃなきゃいかんだろう!


それだけに期待したのは「酔拳2」。だがこれは私にはさっぱり面白くなかった。

ストーリーはないに等しく、誰かに師事するわけでもなく、わけのわからない強敵とエンドレスにしばき合っておしまい。カンフーアクションに特撮入れすぎ。

だがこれを最高傑作と感じている人も多いと知り、私の期待した古典的ストーリーは求められなくなったのだと悟った。


さてこんなことをつらつらと書くきっかけとなったのは、ネットで耳にした、ある若いジャッキーファンの言葉。

酔拳は全然面白くなかった。」

世界がひっくり返るくらいの衝撃を受けたね。

要するに現代が舞台のジャッキーのスピーディーなアクションに魅せられた人にとって、「酔拳」は古臭く退屈でしかないらしい。

私にとって時代劇のチャンバラがさっぱり面白くないのと同じだろうか。余談だが私は車や建物を利用したアクションにもまるで興味がない。