23年ぶりに再読・吉川英治「三国志」

23年前って何歳ですかという質問は禁止。去年の暮れから年明けにかけて再読。って5ヶ月も前じゃん。

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)

初めて読んだ時の感想は「群集劇としてとても面白い」というものだった。一方、主人公たる劉備の偉さがよく理解できず、特定の人物に思い入れを持つことはなかった。
果たして23年の時を経て新たな発見は……特になし。
作者が曹操をかなり好意的に描いているせいか、勧善懲悪の色合いが薄められ、全体が淡泊に感じられる。
蜀を奪取せよという「天下三分の計」に感銘を受けて諸葛亮を軍師に据えておきながら「だって劉璋に悪いしぃ」とためらう劉備。仁君というより「優柔不断のお人好し」に見えてしまう。
吉川三国志に関しては、やはり英雄譚としてよりも、群集劇としての面白さに私は惹かれる。

オリジナルエピソード

鴻芙蓉(白芙蓉)っちゅうオリジナルキャラがいましたな。決起して間もない頃の劉備のこひものがたり。
これがいつの間にやら「麋夫人」として劉備の妻になっている。ほんと「いつの間にやら」で、前後に何のドラマもない。その後も殆ど忘れ去られた存在に。
この麋夫人、史実や原作では配下の麋竺の妹だったりする。「鴻芙蓉」がなんで「麋夫人」なのかと腑に落ちなかったが、無理やりひっつけちゃってたのね。
人形劇「三国志」のヒロインである淑玲(すうりん)は、恐らくこの鴻芙蓉というキャラクターを拝借したもの。こちらは毎回のように登場する。ゲントクさま……。