津森久美子ライブ in 四ツ谷(10/15)

今回はギターが飯泉昌宏、ギターラはいつも通り月本一史。
音の印象がまるで違うのに驚いた。常に控え目な水谷和大とは対照的に、耳を引く音を随所で響かせる。初めての組み合わせとのことで、安定感ではいつもの組み合わせに及ばないが、ああして「遊び」が散りばめられるのもいいものだ。
2ndステージ冒頭で、いい具合に酒の回ったオジサマが、曲紹介が始まってもお喋りをやめない。が、ファディスタがさり気ない目くばせで巧みに黙らせた。うまい。それを除けば殆ど私語のない快適なライブ空間。

曲と歌詞のカンケイ

曲(歌)を聴いた時の印象と、歌詞(訳詞)を読んだ時の印象がまるで違う曲に時々出会う。
津森久美子のレパートリー「花売りのジュリア」(CDにも収録されている)もそのひとつ。やけくそ気味というのか暴力的というのか、唄い手自身の内面を、ろ過網を通さずにドロリとしたままに突き出す、そんな曲に私には聴こえる。ところがその歌詞はというと「昼は花を売り、夜はファドを歌う、チャーミングな女性」とまあ、ある女性を讃える内容。全然違うじゃん! 彼女の歌唱も当然ドロリどころか「優美」とか、そんな形容の当てはまるもの。何度聴いても、旋律と歌詞が私の中で結び付かない。
さてこれはどういうことか、というようなことを直接尋ねてみたところ……。

  1. ファドはドロリとしてはいけない(月本氏)
  2. これは元々は男性の唄う曲
  3. 津森久美子のCDではかなりテンポを速めている
  4. 実は遅めのテイクもあるしライブで唄ったこともある
  5. この曲を異なる歌詞で、というバージョンは存在しない(古典ファドにはそういうのが多いらしい)

更に、月本氏がギターラを爪弾きながら「こんな感じですわ〜」と口ずさんでくれた。お〜。
後になってマゼールの指揮する「ボレロ」を思い出した。通常15分程度の曲を13分で演奏している。あった、これこれ。結構好きなんだよね。

ラヴェル:「ボレロ」

ラヴェル:「ボレロ」