マドレデウスの音楽を生身の人間が奏でているというのが今でも不思議に思える。聴きながら時々「あれ、これ生じゃん」とふと気付くという間抜けなことを繰り返していた。
アンコール曲を含めて18曲と、前回(2001年)よりだいぶ少なめだったが、大阪、渋谷ではどうなるのだろう。
この日のテレーザの歌声は、表面的な印象をひとことで言えば「滑らか」。それは表現力の深まりということでもあるだろうし、近作の曲想、音域がそうさせているということでもあるのだろう。
最近、ネット上ではテレーザの声の衰えを指摘する記述が多い。確かに声だけを言うなら20代半ば、「陽光と静寂」の頃がピークだったと私は思っているが、歌手としての総合的な実力なら今の方が確実に上だぜ。
「衰えを技術でカバー」といった消極的な評価は当たらない。テレーザ・サルゲイロは今も「進化」し続けている。その進化が素直に嬉しい。