脳の話2

日本人は150グラム大きい脳で考える

仕事か育児か

私はジェンダーフリー論が嫌いである。しかし反ジェンダーフリー論はもっと嫌いである。なんて、ジェンダーフリーなんて曖昧な単語を好きの嫌いの言ってもしょうがないのだが、まあ言ってみたかったんです。
第三章「こんなに違う男の脳と女の脳」。前半も面白いけど後半の引用から。脳の話からちょっと離れている。

小松 阿部さんは独身ですけど、たとえば結婚したら、奥さんは専業主婦がいいですか?
阿部 どっちでもいいんだよね。
(略)
小松 でも、そういう女性(キャリアレディ)を見ると「無理をしているな」と思ったりもするんですよね?
阿部 そうだね。動物として見た時の女性の幸福感というのは、やはり出産、育児というところにあるはずだからね。そうでなければ、あれだけの大変な作業はできないはずだから。その幸福を捨てて、他のことで果たして幸福感が得られるんだろうか、という気はするね。
小松 お医者さんの意見としては受け入れられるけど、やっぱりちょっと、時代錯誤な物言いだなあ(笑)。アメリカの企業でなら、公にそんなことをいえばセクハラ問題になるでしょう。
阿部 現実社会ではそうだよね。ごめんね。でもまあ、「私は女社長です」とバリバリ働き続けて、ある時ハッと、「あれっ、私の人生は何だったの?」と気づく人は非常に多いんだよ。
小松 肉体や精神に変化が起こるってことは事実でしょうけど、結婚をせずに働く女性が一様にそうなるとは思えない。
阿部 もちろん、すべてではない。けれど、そういう女性が多数セラピーに来るのも事実。セラピーでは、そうした女性たちに、過ぎてしまったことはしょうがないよ、というアドバイスしかできないんだよ。

「動物として見た時の女性の幸福感というのは、やはり出産、育児というところにあるはず」というくだりへの反発は少なからずあるだろう。そこは聞き手が代弁(本気かわざとかは不明)することで阿部氏の見解をバランスよく引き出している。
では育児に明け暮れた挙句に「あれっ、私の人生は何だったの?」と気づく人だっているんじゃないか、それとの統計比較はしたのか、なんて厳密な話はここではなされない。恐らくは脳神経外科医兼臨床心理士としての「実感」。阿部氏は仕事一筋に生きる女性を肯定しながらも「女性たちは、しばらくはこの問題と向き合っていくことにはなると思うよ」と結ぶ。

どこからともなく細木数子

この人のトークは10分以上聞き続けられないので発言をそういくつも聞いたわけではないが、私が聞いた限りではよく言われる男尊女卑というよりも、女性が旧来(といっても戦後かな)と異なる生き方をすることの“難しさ”、家制度の合理性をよく言い当てているように思う。キャリア志向を否定はしない。しかし「それならコレは諦めなさい」。(しかしみんな「叱られたい」のかなあ。あの芸風にはついて行けん。)

6年前のやり取り

私の掲示板で独身主義の女性をネタに盛り上がったことがある。私はこんなことを書いている。なんだ、「結婚」を「育児」に置き換えれば阿部氏の言ってることと同じじゃん。

 社会通念が人の人生を縛り付けてしまうのはもちろんいけない。でも同時に社会通念というやつは侮れないとも思う。侮れないから社会通念として残ってもいる。
「結婚=幸福」「独身=不幸」は誤りだけれど、「結婚によって獲得し得る幸福」がたくさんあるのは多分事実。殆どの人にとって、独身を貫いて幸福な人生を歩むのは、結婚して幸福になるより多分難しい。ハードルの高さは比較にならないと思う。
 だから独身主義の人の主張にはかなり警戒心を持つ。爺さん婆さんになってから「やっぱ結婚すればよかった〜」と臍を噛む人はかなり多いと思う。結婚、子育て、家族といったことに対する社会通念をクソ味噌に言いつつも全てしっかり享受している石坂啓の言葉には説得力を感じる。