第3回:悪魔の囁き

毎シリーズ毎シリーズ気になってしまうのが乙女嬢(金八の娘)のキャラクター。前シリーズ終了時に、私は自分の掲示板にこんな風に書いている。

授業では「男女共同参画社会」などと言いながら、家庭では家事のかなりの割合を女である乙女が請け負っている。
事情はある。第1に父子家庭であること。第2に金八先生が多忙であること。第3に息子(弟)の幸作が癌で闘病中であること。
しかし大学1年生という年代ならば自分自身の悩みもあろうし、家事がしんどくなることだってあるのではないか。せめてそういう葛藤は描いてもらいたかった。
(略)
シリーズを通じて苦悩し、もがくのは金八先生であり幸作。どういうわけか乙女は「見守る人」でしかなかった。言ってみれば男が女に期待する「母親」あるいは「妻」の姿。自分自身の苦悩がそこには見られない。(脚本は女性である小山内美江子なのだが……。)
乙女の数少ない自己主張のひとつに、乾夫人の出産に立ち会いたい(見学したい)というものがあったが、その時限りのエピソードに過ぎず、続くものがなかった。
次のシリーズでは何かやらかしてもらいたいものである。

さてこの回の乙女嬢。
彼女が慕う養護学校の教員の顔の大きな痣(率直に言うと醜悪と言っていいほどのもの)を3Bの生徒が「うつるらしい」と吹聴した。どういうわけか金八先生は叱り飛ばさない(演出上の作為を感じずにはいられない)。
それを知った乙女嬢が金八を責め立てる。問題はその時のセリフの内容。「教育とは……」といった教科書に載っているような言葉をなぞるばかりで乙女嬢自身の生の怒りの言葉がないのだ。前シリーズ同様、お座なりな印象が拭えない。
金八に家庭を持たせているのは「父親」としての顔を描くことでドラマに奥行きを与えるためであろう。ならばもう少し娘の姿を丁寧に描いてほしいと思う。一方、息子の幸作は失恋、浪人と散々な役回りだが、なかなかいい味を出している。
今回の題は「悪魔の囁き」。
麻薬をやって気を失って倒れているところを病院に運び込まれた3Bの2人の生徒。翌日(?)クラスメートにキモチよさを誇らしげに話すバカさ加減、いいなあ、というかむかつくなあというか。