一人酒のはずが

場所

渋谷区

人数(自分含む)

1名というか2名というか

飲んだもの

赤ワイン2

酔い加減

C:ほろ酔い第1段階

所見

天狗。居酒屋に一人で行った時は、手持ち無沙汰なので飲み食いしながらブログのネタを手帳にちまちま書くことが多い。今回もそうしていると、同じカウンタテーブルの正面にいるオジサマに話しかけられた。(仕切りはあるが端なので互いの顔を見ようと思えば見える。)60代半ばといったところか。
「料理やお酒のことを書いてらっしゃるんですか?」
違いますけど。私を物書きか何かと思ったらしい。
「この店は、これこれで素晴らしいんですよ」とかなんとか。このチェーン店が?
「ここにはよく来られるんですか」だの「どんな店に行かれるんですか」だの聞かれ、ついポルトガル料理店にたまに行くというようなことを言うと、そこに食い付いて来て喋ること喋ること。
「ポートワインはすごくおいしいね。」
「ワインは度数が低くてオンナの領域だけど、ポートはオトコの領域だね。」
「どうしてまたポルトガルなんですか。」
「スペイン旅行に行ったけど、すごくよかった。」
といった面白くもない、同じ話同じ質問の繰り返し。
「えっ、ブラジルの公用語ポルトガル語なんですか。」
「えっ、中南米って殆どスペイン語圏なんですか。」
「えっ、種子島に漂着したのはポルトガル人なんですか。」
何も知らねえんだな、このオッサン。
「高校の仲間で外語大のポルトガル語学科に進んだ奴がいてね。今度紹介したいですよ。」
紹介されても困りますが。
「とにかくイイやつなんです。本当にイイやつなんです。」
知らねえよ。
そして、なぜか突然家族の話が始まる。
「息子はね、家に寄り付かないんですよ。」
「うちの女房はいつまでもわが子をコドモと思って接してしまうんだよね。」
まあよくある話だ。
「オトコは社会を知ってるけど、ずっと主婦やってるオンナはそうじゃないから。」
そういう問題か?
「一度息子が彼女を連れて来たんだけど、こんな姑とは付き合えないと別れちゃったみたいなんだ。」
奥さん、共依存者ね。
「あなたご結婚は? あ、されてない。じゃあわかんないね。」
多分アンタよりはわかってるよ。


いつ果てるともなく続く話に生返事しながら、なんとかネタ書きを続けようとしたら、
「こういう話を書き留めてらっしゃるんですか?」
書き留めねえよ! あ、後で書き留めちゃいましたが。
2杯めのワインが尽きた。サングリアでも飲むかとメニューに目を走らせる。
いや待てよ、と考える。もう一杯飲んだところで、このオッサンの話を聞かされる時間が延びるだけなんじゃないか。
オジサマが先に店員を呼び止め、私に向かって「何飲みます?」
ぎゃっ。
咄嗟に「いえ、私はもう……。」
「あ、そう」と店員に何やら尋ね始める。
その隙に席を立ち、何も言わずにレジへ向かった。永久にさようなら。
後になって考えてみれば「すいません、いい加減ひとりで飲みたいんで」とバッサリ切ればいい話なのだが、相手がいかにも温厚で善良そのものという人だったこともあり、曖昧に相槌を打ち続けるばかりでございました。ナンパされた女性の気持ちってこんな感じなんでしょうか。


はっきり嫌いなわけではないけれど、話していてまるっきり楽しくないという、実に厄介な存在。そしてそういう手合いに限って、相手の「No」「ウンザリ」「面倒くさい」を感じ取る能力がとことん欠如している。
こういう人がいたら、あなたならどうしますか。