新・巨人の星

新・巨人の星(1) (講談社漫画文庫)

新・巨人の星(1) (講談社漫画文庫)

ネットオークションでやっと入手。

描写の変化

「劇画」を意識したのか、飛雄馬や花形がやたらと端整に描かれている。どちらも前作の面影ないよなあ。もともと表情の描き分けのうまい人ではないが、輪をかけて無表情になっている。飛雄馬の体つきが妙に筋肉質。
相変わらずよく抱き合い、よく泣く。ウサギ跳びをまだやってる。連載は1976年から1978年。
投球フォームや打撃フォームのデタラメさは変わらず。正しく描けば迫力が出るというものでもないとはいうものの。

復帰以前

雄馬がピッチャーとして公式戦のマウンドに復帰するまでが長い長い。私にはそこが面白かったが「魔球」を期待する当時の読者には不評だったのではないかな。そもそも魔球を登場させる構想が当初からあったのかどうか疑問だし、読者の要望でやむなく出したのかも知れない。

復帰以後

右投手としての可能性にほれ込んだ長島監督は、背番号3を飛雄馬に贈る。その割には復帰後の活躍は「それなり」レベル。伴に「10勝前後でいいじゃないか」とさえ言われる。
球速は「鈴木啓示ほどではな」く、日本シリーズでは阪急打線に打ち込まれる。で、魔球開発へ、と。長島監督が飛雄馬のどこにほれ込んだのか謎だ。球が速いとか重いとかいうよりも、「何かやってくれる」という直感ということになるのか。

雄馬の資質

「圧倒的な実力者」という印象がなんとなく残っていたが、これは私の記憶違い。むしろ、球が速くコントロールも抜群だが球質が軽くプロとして通用しないという瀬戸際に立たされて魔球を編み出したというのが「巨人の星」(左腕)の設定だった。
一方「新・巨人の星」(右腕)では、球速は左腕と互角だが球が重く、コントロールの悪さが逆に武器になるという設定。
そもそも飛雄馬の球は何キロくらいなのだろう。
球界一とは行かないならば、好調時で147〜148キロ? でも遠藤一彦佐々木主浩はそれくらいの速球とフォークを武器に全盛期は無敵だった。
速球投手という設定だから常時140キロ台をキープできるレベルではあったろう。それでコントロール抜群で変化球も扱えれば、たとえ球が軽くてもエース級の投手にはなれるんじゃないかな。
一方、右腕の「荒れ球」では10勝前後という評価には納得できる。が、そうなるとなぜに背番号3……。
余談だがその鈴木啓示も左投手だが元々は右利きなのを父親に矯正されたのだとか。鈴木の入団は1965年、「新・巨人の星」連載は1976年から。偶然の一致だろうか。

星明子(→花形明子)

いつも着物姿。「泣く」以外に何もしない。
面と向かってではないが夫の花形に「子供ができないのが玉に瑕」とひどいことを言われる。しかも「暴言」という扱いではなく、むしろ「寛大なよき夫」という演出とさえ思わせる描写。
「良妻」なんて言葉が褒め言葉として通用していた時代ならではですな。

魔球と結末

左門、花形との対決は、抑えたり打たれたりが淡々と繰り返され、「ライバル対決」の比重は軽い。
大リーグボール右1号は、そのカラクリに注目させておきながら、攻略されるかどうかにのみ焦点が当てられ、カラクリは明かされなかった。終わり方も唐突。ロメオ南条はどうなった。左門−京子−飛雄馬の三角関係(死語)も完全にけりが付いていないことを匂わせていたじゃないか。
何か事情があったとしか思えない。といっても人気面の問題ではないだろう。梶原一騎は当時生活が相当乱れていたというから、息切れしたのかも知れない。
この漫画は前半の方が面白い。

球速ランキング

ちょっと古いデータだけど。
http://www.spopre.com/baseball/hayai/03.html
150キロ投手ってこんなにいるのか。野茂も佐々木もランク外。江夏豊鈴木啓示は何キロ出てたんだろ。