江國香織を読む

「好きな小説のジャンルは」と聞かれたら、迷うことなく「ラブストーリー」と答えません。
1年ほど前に100円で買ったのをようやく読んでみた。

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

「ひとつの物語を男の視点、女の視点でそれぞれ書いた」なんて新聞広告を見たのはつい最近のような気がしていたが単行本の刊行は1999年だそうで。
読んだのは女の視点で書かれた「Rosso」だけ。
なるほど、うまい。精緻でスマート。ピンと張り詰めた怠惰(なんのこっちゃ)。女性のカリスマ的作家なのもうなずける。
(以後、少し展開に触れてます)
何もかもうまく行っている(かのような)恋人同士。実は人と「関わる」ことをやめてしまっていた主人公。二人の間に確かなものは何もない。焦る男。戸惑う女。このアメリカ人男性との別れは、悲しくない。
特にけちを付けたい箇所はないが、感想は「うまいなあ」に留まった。


Amazonに寄せられたレビューの一部。ははは、こりゃ作者が気の毒だわ。
「忘れられない恋のために周りを傷つけるのはよく無い」
「大事なことを何も話さないで、親友と言えるのだろうか」
「不器用でプライドの高いアオイ」
「自己中心的」


面白いのは「相手の男性がかわいそう」という感想を書くのは女性読者ばかりということ。(もっとも主人公を「自己中心的」と評した男性読者は同じ感想を持ったのかも知れないが。)主人公が男に「やさしく」したところでどうにもならんのだけどね。
熱心な男性読者は得にくい作風だと思う。うまく説明できないが。私には「面白い作家」。多分に「興味深い」という意味合いを含んだ「面白い」であって、時を忘れて読みふけるというのではない。