冨田勲「イーハトーヴ」交響曲・初演

<第一部>

<第二部>「イーハトーヴ」交響曲

  1. 岩手山の大鷲<種山ヶ原の牧歌>
  2. 剣舞星めぐりの歌
  3. 注文の多い料理店
  4. 風の又三郎
  5. 銀河鉄道の夜
  6. 雨にも負けず
  7. 岩手山の大鷲<種山ヶ原の牧歌>

東京オペラシティホールに行って参りました。初台は遠かった……。
指揮の大友直人登場。甘いマスク(死語)のお兄ちゃんというイメージを持っていたが、いつの間にやら白髪交じりの60代。
まずはジャングル大帝……の割には妙に日本的なメロディ。ジャングル大帝にこんな曲あったかなあ。と、曲が切れる。拍手なし。そのまま次の曲へ。やっぱり知らない曲。よくわからないまま3曲終了。指揮者が団員を立たせて曲の終わりを客に知らせる。客席拍手。
大友氏がマイクを握る。
挨拶の後、客席にいた冨田氏を舞台に招く。曲にまつわる話をあれこれ。
初音ミク起用というのは、ナントカの事情ってやつかなあとやや冷めた受け止め方をしていたが、自分から「出演」を依頼したのだと繰り返し強調する冨田氏。どうも本当のようだ。
大友氏が「80代で交響曲を作った人は過去に殆どいない」と言うと、「80歳までは70代です」と笑わせる冨田氏。
曲順を変更したことがここで明かされる。最初の3曲は山田洋次メドレーだったとのこと。戸惑いが先に立ってじっくり味わえなかったよ〜。
「今日、山田さんもいらしてるんです」と冨田氏。山田洋次氏、客席で立ち上がる。客席拍手。
大友氏と冨田氏が話している後ろでは、合唱団員がひとりまたひとりと入場。男女合わせ150人くらいか。
曲順変更の理由は、続く2曲に合唱が加わるからだったようだ。

交響詩ジャングル大帝

お〜平野忠彦の「あ〜あ〜〜〜」が合唱。こいつは圧巻。
1960年代に、こんなにスケールの大きなアニメテーマ曲が作られていたなんて。

勝海舟

これを生で聴ける日が来るとは。
冨田勲が数多く手がけた大河ドラマテーマ曲の中でもとりわけ勇壮なこの曲を選んだアンタ(だれ?)はエライ! こちらも合唱団大活躍。来てよかったとしみじみ。
ただ、大友直人の演奏は常にマイルドで、こういう躍動感のある曲は時として間延びして聞こえる。スパイスとなる金管が埋もれて聞こえたりすると、別のやり方はないのかしらと思わないでもない。

「イーハトーヴ」交響曲

休憩を挟み、いよいよ世界初演のイーハトーヴ。
場内暗転。そこここがライトアップ。2階客席には児童合唱団合唱団。50〜60人か。これにて総勢約300人、と。
お〜のっけからエンターテイメント。打楽器が効いてます。大鷲ですよ大鷲。
星めぐりの歌」では当然児童合唱団の出番。
注文の多い料理店」でいよいよ初音ミク。上方のスクリーンに登場。
う〜ん。
技術的にクリアすべき点はクリアできていると思う。
けれども、あのゴテゴテビジュアルには正直興を削がれる。この場にミクが現れて歌っているとは思えなかった。
あの声の、表情があるようなないようなわけのわからなさは冨田勲の世界に合うのではないかと思っていた。ところが実際に聴いてみるとコケティッシュすぎて、曲から浮いているように思えた。ミキシングの問題もあったのだろうか、それともこちらが気負い込んで聴いてしまったからか、ミクが歌っている間はどうもオーケストラの音が耳に入らなかった。
「雨にも負けず」にはビックリ。あの詩そのまんま。に曲を付けたもの。どんなメロディか、アナタ想像できますか。
初音ミクの登場場面以外も、ビジュアル面の演出があちこちに。「銀河鉄道の夜」では当然星星星。これらは実によかった。


全体としては、エンターテイメントでありつつ胸に染み入るという冨田勲の本領が存分に発揮された一作だと思う。初演だけに曲の終わりがわからなかったけど……。

アンコール・終演

1曲目は「リボンの騎士」で初音ミクに花を持たせ、2曲目は「青い地球は誰のもの」で児童合唱団を主役に。
楽団員が退場した後も、一列ずつ退場して行く子供達に再び拍手。続いて大人の合唱団員が全員退場し終えるまで拍手する聴衆多数。
ロビーに出ると、カメラを向けられ上気した顔で感想を語っている人があちこちに。背後でピースサインしときました。うそ。
12月から2月にかけて特集番組がいくつかあるようだ。観よう。


それにしても、ここ最近私が足を運んだ公演やら講演やらのアーチストの年齢。
ロリン・マゼール:82歳
杉浦範茂:81歳
今江祥智:80歳
冨田勲:80歳