ノッテマス

先日の松田美緒のライブの話です。私がノリノリで踊ったとかいう話ではありません。
8月のライブを「今までで一番」とここで書いたが、今はその時のレベルが当たり前になってしまっている。誇張でも何でもなく、聴く度によくなっている。
かつてはファドに傾倒してリスボン留学までした彼女だが、その後ポルトガル語圏の様々な音楽に手を広げ、ファドには若干距離を置くようになった。デビューアルバムにはファドも何曲か収められているものの、「ファド歌手」とは名乗っていない。
そんな彼女が25日のライブでは、「リスボン思い出コーナー」と称して久しぶりにファドをたくさん唄った。これがいいのである。若干手探りの印象もあった留学前よりもずっと。今はファド一本やりでないとはいえ、彼女がファドをいかに大切にしているかが、とてもよくわかる。


初めて彼女のライブに行った時は、喋りがとてもぎこちなかった。それもまた彼女の明るいキャラクターにより楽しい空間が作られてもいたが、彼女自身これではいけないと感じていたのだろう、帰国後は自然体の喋りから一転、芝居がかった語りをするようになった。然るべき努力であるのは確かだが、彼女本来のキャラクターに触れたことのある者としては、それが影を潜めてしまうのが寂しくもあり、また聞いていて気恥ずかしさを感じなくもなかった。
しかし最近は、鍛錬を積んだ喋りと彼女本来の明るさが溶け合った心地よいトークを聞かせてくれるようになった。アドリブで時折やらかす「ボケ」も健在。彼女のあらゆる面が、今は長所となっている。もちろん歌そのものは日進月歩。11月28日のデビューコンサート(草月ホール)ではもう失敗のしようがないのではないか。