無残なり鉄兵

なんとはなしに「おれは鉄兵」(ちばてつや)を読み返す。但し途中からは飛ばし読み。
愛蔵版全18集を持っているが序盤が猛烈に面白い。しかし第5集あたりから徐々に勢いを失い迷走し、主人公がすっかり輝きを失ったまま完結。
「野生児」が周囲に迷惑をかけまくる様子に爆笑また爆笑だったのが、剣道に打ち込むようになってからは「勝つためには手段を選ばぬ卑怯者」あるいは「横暴なリーダー」、去る者には追わないどころか嫌がらせ。周囲から何度も諌められるが鉄兵は聞く耳を持たず、そして勝ち続ける。勝っても痛快さがまるでない。
あしたのジョー」の場合は「ライバルに挑む」「チャンピオンを目指す」「命を燃やす」といった軸があった。それでいて型破りな魅力を失うことはなかった。
中盤以降の「おれは鉄兵」には、そのどちらもない。なにも生き方を問うストーリーにせねばならないとは思わない。深刻なテーマ(軸)はなくてもいい。卑怯者のままでもいい。どこか痛快さを感じさせるものであれば。
ギャグ漫画であり続けながらも鉄兵の魅力を損なわずに済む道はなかったのかと残念に思う。作者はどんな思いで中盤以降を描いていたのだろう。