みやたけし4

みやたけしのサッカー漫画もう一作品。

風のフィールド(1986-1989、週刊少年チャンピオン

みやたけしは結構好きな漫画家だったが、この作品で一気にキライになってしまった。再読。

風のフィールド(1)

風のフィールド(1)

舞台は高校サッカー。「ストライカー列伝」が短命だっただけに、いやが上にも期待しちゃうじゃないですか。それなのに、ああそれなのに。

ギャグは殆どなくなっていた。シリアスならシリアスでもいいのだが、まずキャラづくりで大コケ。

主人公の性格が……説明不能だなあれは。

「ブンの青シュン」のような明朗快活天然バカでもない。

「はしれ走」のようなイジケ虫でもない。

あしたのジョー」のようなひねくれ熱血漢でもない。

「風のフィールド」の主人公は熱血というより支離滅裂。描写がことごとく空回りで、まったく思い入れが持てない。脇役もパッとしない。キーパーの飛鳥やダーティーな二谷あたりはわりといい味を出していたが、「はしれ走」の面々に比べると総じて印象が薄い。


試合での攻防やテクニックも、荒唐無稽な上に説得力がない。

たとえばこんな攻防。

その1。

味方のピンチ。敵チームの高いセンタリングを、敵1人味方2人で奪い合う局面。敵がヘディングをわざと空振りしてフェイント(←すでに意味不明)、背後に落ちるボールをヒールで蹴り上げ、自分の頭上を越させて前に落ちたところをシュート → ゴール。

なんじゃこりゃ。

その2。

敵がヘディングしようとしている球を、背後から背面跳びで敵の頭を飛び越えてヘディング。

ギャグシーンじゃないんだぜ、これ。

その3。

鉄壁スイーパーにおとりのロングシュート → ダイレクトでクリアするスイーパー → 蹴る方向を読んでボレーシュート → スイーパーがそのシュートを後ろ回し蹴りでクリア → その球をすかさずオーバーヘッドでシュート → ゴール。

燃えねえ……。


その場その場で取って付けたようなスーパープレイが乱発されるばかりで、展開に「ドライブシュートがいつ炸裂するか」というような軸がないからスリルがない。

そしてみやたけしお得意の怪我・怪我・怪我。怪我を押してプレイして死んだり死にかけたり戦線離脱したりの繰り返し。読んでいてどんどん憂鬱になって来る。


必殺シュートの加熱もひどい。

球が途中から加速するアクセルシュートはいいとしよう(「ブンの青シュン」の二番煎じなどと突っ込むなかれ)。ネオ・アクセルシュート(最初から加速する)もギリギリ許そう。だがその先は一体なんだ。

ネオ・スプリット・アクセル(なぜか球が分身する)、火の玉アクセル(なぜか球が分身した上に火の玉になる)、ファイヤースクリューアクセル(なぜか火の玉が渦を巻く)、スパークアクセル(なぜか球が光る)。

これが「ゲームセンターあらし」みたいに吹っ切れたバカ漫画ならいいが、苦し紛れにバカをやってるとしか思えないわけだ。


万事この調子でグダグダと勝ち続ける全17巻のサッカー漫画。一体どうしたみやたけし、と言いたかった二十数年前の私だが、再読してまったく同じ感想を持ったよ。

興味のある人は「マンガ読破!」で「はしれ走」を読んだ後で「風のフィールド」を読んで比べてみてつかーさい。無料だよ。
http://dokuha.net/