今江祥智講演 in 東京クレヨンハウス

去年に続き今年も杖をついての登場。しかも初めて座って話し始める。膝を痛めているとのこと。御年77歳。喜寿ですよアナタ。
しかし興に乗ったのか途中から立ち上がり、結局1時間あまり立ちっ放しだったかな。
なんか健康状態レポートみたいだな。話を聞いてる時は楽しんで、終わった後は忘れちゃうからな……。まあ何かの参考にしたくて話を聞きに行くわけじゃないからして、声の今江ワールドを楽しめればそれでいいのだよ。
今江氏が制限時間を勘違いしていたらしく早めに終わり、最後に質問コーナーが。少しためらった後、よっしゃ一昨年しそびれた質問をしたれと手を上げた。
「灰谷文学を熱心に薦めて世に広めた今江さんですが、ある時期以降は評論でも講演でも殆ど言及されていません。時代ごとの灰谷作品をどう感じておられるのか聞かせていただけませんか。」
これはずっと気になっていたこと。なにしろクレヨンハウスでの講演でも、この10年間灰谷文学が話題の中心になったことは一度もない。
まずは「死んだやつの悪口言いたない」と聴衆を笑わせる。本当に嫌だったのかも知れない。スンマセン。
「彼は、教師と生徒の安心できる関係を描けた稀有な作家。これは彼自身が教師であったことが大きい。しかし“学校”という枠から飛び出して全く違う作品世界を作り出すことを彼はしなかった。そこが残念。」
今江氏は「兎の眼」や「太陽の子」を絶賛したものの、それ以降の作品には殆ど言及していない。確かに灰谷健次郎の長編児童文学で学校に重きが置かれない作品というと「我利馬の船出」くらいだろうか。だがそれも他の作品とそう変わり映えはしない。
さて元来今江氏は「褒め上手」。批判の言葉を執拗に重ねたがらない人物だからして、灰谷作品の話はここまで。
その先は、講演で繰り返し名前を出している作家達の話へ移る。「彼ら彼女らは何度も“飛び出して”いる」「次にどんな作品を書くかまったく予想できない」と。しばらくレンアイものばかり書いていた江國香織だって童話の世界に戻りつつあるじゃん、とも。
二宮由紀子、川島誠岡田淳といった面々への期待の言葉で話は締めくくられた。ありがとうござりました。
さて今日買った本は、新作「桜桃のみのるころ」。三部作……って、おいおい第二作まだ読んでないよ。と気付いて後でAmazonで注文。

桜桃のみのるころ

桜桃のみのるころ